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コロナ下の生活は思いがけず幸せだった [つぶやき]

昨日、東京を含めて緊急事態宣言の全面解除が決定した。
社会全体にとっては喜ばしいことだと思うけれど、私は少し寂しかった。
なぜなら、コロナ下のひきこもり自粛生活で私はとても幸せを感じていたからだ。

なんといっても在宅勤務の快適さを知ってしまった。
往復90分の車通勤は、思っていた以上に私にストレスを与えていた。
背後にぴったりくっつく後続車、方向指示器を出さない車、トンネル内でライトを点灯させない車。
そういったものにイライラし、そういうものにイチイチ反応している自分の不寛容さに嫌気する、そんな朝が、庭のシャクヤクを切って部屋に飾る朝に代わった。

嫌いな人の声や物音にストレスをためる勤務時間が、お気に入りの音楽をかけて集中する時間に代わった。

仕事をしているふりをしてただダラダラとインターネットを見て過ごす待機時間が、堂々と本を読む時間に代わった。

上司に合わせていた室温が、自分の適温に代わった。

閉塞感ある仕事場が、空と揺れる大樹の見える仕事場に代わった。

私の仕事は90パーセント以上がPC上の作業で、リモートデスクトップ接続さえあればどこでも問題なく仕事ができることがわかってしまった。
一部、紙ベースのアナログな業務はあるものの、それは週に1度出勤すれば十分対応できる。

デメリットが一切見出せない。
仕事仲間との交流? 連帯感?
そういうものを求める人が一定数いることは理解している。
しかし、私はそういうものがなくても別に不都合を感じないし、孤独を感じないことが確認された。

仕事だけではない。
9連休も、その他の週末も、どこにも遊びに行かない休日を2か月近く続けているけれど、全然飽きない。
むしろ自分は今まで純粋に「行きたい」と思って外出していたというよりも、「外に出なきゃ」という義務感に駆られて出掛けていたのではないかという気すらしてくる。

コロナ前は家にいる休日を居心地悪く感じて「どこかに出かけなきゃ」「世界を広げなきゃ」「なにか新しいものを体験しなきゃ」「刺激を受けなきゃ」「人と会わなきゃ」と焦燥感に駆られていた。
ところが外出しないことが「やるべきこと」になったコロナ下の自粛生活では、これらのプレッシャーが一切なくなり、何の罪悪感も焦燥感もなく心ゆくまでひきこもり生活を楽しむことができた。
どこにも出かけず、ひたすらdアニメとpixivに時間を費やし、twitterで流れてきたレシピで作ったご飯を食べ、咲き誇る庭のシャクヤクを眺めていた9連休、はっきり言って私は幸福だった。

見たかった美術展に行けなかったり、楽しみにしていた舞台が中止になったということはあったけれど、そもそもやっていないと、あまり悔しいとも残念とも思わないことを知った。

現代の消費社会において、消費者の「欲しい」という欲求は、「商品」を提供されることによって創出される、というようなことを以前に何かで見たけれど、まさにそれだと思った。
iPhoneのようなものを消費者が欲っしたからiPhoneが作られたのではなく、iPhoneが出てきてはじめて、人々はそれを「欲しい」と思った。
美術展が開催されるから、行きたいと思う。
舞台公演が開催されるから、観たいと思う。
なければ、それに対する欲求は存在しない。

自分がいかに消費を煽られていたかを思い知る。
そしてそれに疲れていたことも。
一方で、その煽られた消費によって経済は回っているわけで、社会で暮らす以上、私もその恩恵を受ける一人であり、そこにはジレンマがある。

しかし、ほとんど移動せず、消費せず、人と会わなかったひきこもり自粛生活が、今までになく私の心に安らぎをもたらしてくれたことは確かなのだ。

テレビなどの報道では、夫の在宅勤務にストレスをためる妻や、子供がいる家での仕事の困難を訴えるママさんなどをよく目にする。
大変だなぁ、と思う。
しかし、私が直接、あるいは人づてに聞いた話では、働くママさんも含めて「在宅勤務快適だからずっと続けたい」という声が圧倒的に多い。
なぜそういう声はほとんど報道されないのだろう?
ある調査では7割の人が在宅勤務を今後も続けたいと答えているそうなのだが。

同じく「自粛疲れ」という言葉も街の人々のインタビューなどでよく耳にするけれど、私の周りでは「別にこれと言って不便は感じない」や「むしろ大っぴらにひきこもれて楽」という声が多い。
どうも報道される印象と私の実感には乖離がある。

会社勤めが当たり前になったのは高度経済成長期以降でしょうか?
よくわかりませんけれども、それ以前は長いことほとんどの日本人が職住近接だったわけで、はて、豊かさとはなんであろうか? ゆとりとはなんであろうか? と考えてしまう。
そして今、モノや娯楽が溢れた社会で、私は消費疲れを感じている。

新型コロナウイルスが社会にもたらした影響に、シヴァ神を連想する。
インドの破壊と創造の神だ。
洪水の後に豊かな土壌が残るように、コロナ後の社会が以前よりも生きやすい社会になってくれることを祈っている。

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