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ハイペリオン [本]

「ハイペリオン」 ダン・シモンズ





SF小説のオールタイムベストで上位に入っているし、Kindle版が安かったので読んでみました。

うん、なるほど面白いです。
なんというか、ハリウッド的娯楽SFですね。
謎あり、アクションあり、ロマンスありの群像劇。

連邦に属さない辺境の惑星ハイペリオン。
ここには「時間の墓標」と呼ばれる謎の遺跡がある。
そしてそこに出没するのはあらゆる物理法則を超越する「シュライク」。
この異形の怪物を神と崇める教団によって選ばれた最後の巡礼である7人が、星間戦争の危機が迫る状況下で「時間の墓標」を目指して旅に出る。
旅の途上、7人はそれぞれに抱えるハイペリオンとの因縁とも言える身の上話を順番に語っていく。

私は最初の神父の話が不気味で謎めいていて一番面白かった。
カッサード大佐の話はロマンスというよりエロス。行きつく先がドラマチック。
詩人の話はまあどうでもいいけど、ビリー悲嘆王はなかなか面白いキャラ。
学者と娘の話は人によっては泣けるらしいけど、私はリア充滅べ、としか思わんかった。
女探偵の話はアメリカーン。サブタイトルからしてフィリップ・マーロウなアメリカーン。
領事の話、というか、その祖母の話が一番退屈だったかなぁ。

と、この上下巻では6人の話しか語られません。
残る一人が最大の謎を抱えているはずなのですが、その話は次作で読めるのでしょうか。
この巡礼の旅も、「時間の墓標」へと続く最後の道を進むところで終わっている。
この作品は4部作でそれぞれ上下巻あって、その全部を読む気はないのだけれども、次の「ハイペリオンの没落」でひとまず一区切り付きそうな気がするので続けて読んでみようと思います。

面白いと言えば確かに面白いんだけど、読んでいるといかにも90年代にアメリカで書かれた小説だなぁ、と思う描写が度々出てきます。
基本的に登場人物は白人らしき人々で、優れた容姿とタフさが強調され、アクションシーンが長く、しかも火器を派手にぶっぱなして壊しまくる。
舞台は28世紀の設定なのに、日本人観光客は相変わらず写真(のようなもの)を撮りまくっているとかズッコケるわ。

アメリカ人によるSF小説といっても色んなタイプの作品があるので乱暴に一括りにしてはいけないのはわかるけど、ジョージ・オーウェルの「1984年」はやっぱりイギリス人らしいブラックさを感じるし、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」や筒井康隆の「虚航船団」には日本人らしい虚無感が漂う。
ダン・シモンズにはやはりハリウッドを感じるのです。


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