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雲雀を探せ [日記]

この時期、散歩の途中で雲雀の姿を探すのが好きだ。
ずっと上の方でピリピリピリリリと細かいさえずりが聞こえたら、そこに雲雀がいる。
声を頼りに見当をつけて上空を見渡すけれど、空のうんと高いところにいるので容易には見つからない。
それでもさえずりはずっと聞こえてくる。
どこだどこだ。
辛抱強く探し続けていると、空の中に黒い小さな点が細かく揺れているのが不意に目に入る。
お前、そこにいたのかー。
この瞬間がとても楽しい。

しばらくホバリングしながらさえずっていた雲雀はやがて地上に降りてくる。
この時になってようやく場所がわかることも多い。

雲雀は開けた草地を好む。
雀より一回り大きい程度の小さな体でも、背の低い草地では姿が丸見えだったりする。
それなのに、地上でもさえずり続けていたりして、お前、そんなに無防備で野生の生き物として大丈夫なのか、と心配になる。

私が雲雀のさえずりと姿をそれと認識できるようになったのはここ10年くらいのことだ。
何がきっかけだったかよく覚えていないのだけれど、大学生の頃に読んだ「春琴抄」が頭の中にあったからだというのはたしかだ。

盲目の佳人、春琴が雲雀を空高くに舞い上がらせてそのさえずりを楽しむ場面がある。
それが「雲雀」という鳥であることすらうろ覚えだったけれど、ある時、上空から聞こえるさえずりに耳を傾け、足を止めて姿を探した、それが私が本当に雲雀を認識した始まりだったような気がする。

雲雀はずっと身近にいて、春になると毎年さえずっていたのに、私には見えていなかった。聞こえていなかった。
あるのに、ないも同然だった。
そういうこと、他にもいっぱいいっぱいあるんだろうなぁ。





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