SSブログ

お気に入りの裁判官見付けた [裁判傍聴]

裁判傍聴週間三日目。
本日は覚せい剤3本立てです。

一つ目は被告人が女性でちょっと珍しかったので行ってみた。
40代後半。
足許が覚束なくてちょっと席を移動するのにも補助を必要としていた。
正面の証言台(?)に座っていたが、腕が震え出して元の被告人席へ戻る。
これは覚せい剤と関係あるのかないのか。
その辺りも裁判が進むうちに明らかになるのでしょう、と楽しみにしていたのに、追起訴待ちのため本日分の起訴状読み上げのみで終了。
なんと15分。
つまんなーい!

急いで別法廷へ行って二つ目を途中参加。
被告人は生活保護を受けている状態での覚せい剤使用。
「人が汗水流して働いて納めた税金で、あなたは覚せい剤を買ってるわけですよ」
と弁護人になじられる。
この被告人、覚せい剤の前科4犯で、いかにも依存性がありそうな感じ。
裁判官の質問も思いっきり疑いの眼差しです。
裁「前の刑で出所してから、初めて覚せい剤を買ったのはいつなの?」
被「4月です」
裁「あ、そうなの?4月って、病院から警察に連絡があって逮捕された頃だよね。それまでは全然やってなかったの?」
被「はい、そうです」
裁「ふうーん。でも、幻覚とか幻聴があって、精神科に通ってたんだよね」
被「はい」
裁「それは覚せい剤のせいなんだよね?」
被「はい」
裁「でも買ったのは4月が初めてなんだ?」
被「はい」
裁「じゃあ、その幻覚とか幻聴はずっと前の覚せい剤の影響ってこと?」
被「はい、そうです」
裁「ふうーん・・・」
明らかに信じてません。

検察は3年6月という厳しい求刑。判決は出ていないけれど、ほぼ間違いなく実刑でしょう。
この被告人、自分の薬物使用を止めてくれるような家族や友人はいないと言う。
実際、情状証人には誰も来ていませんでした。
家族も友達もいなくて、仕事もなくて、ヤクから抜けられなくて・・・。
この人が立ち直る道ってあるんだろうか。
奈落の底とやらを垣間見たような気がしました。

次の法廷までの空き時間、わいせつ図画(裏DVD店の雇われ店長)の法廷にお邪魔する。
おお、女性裁判官です。
いかにも賢そうです。
はっきりとよく透るきれいな声も素敵でした。

慌ただしく移動して先ほどの覚せい剤と同じ法廷へ戻る。
裁判官と検察官は引き続き同じ人でした。

この裁判官がすごく面白い。
裁判官にしては珍しく腰が低くて偉そうな感じが全然しない。
役所の親切な窓口担当のようです。
「あのね、おじいちゃん、これは先月までなんですよ。だからね、新しくこの紙に書いていただけますか」
というような口調。
対して検察官は妙な所で妙にお堅い言葉遣いをする。
この二人の会話はこんな感じになる。
裁「情状証人として採用してもよろしいですかぁ?」
検「しかるべく」
おかしい。
裁判官は弁護士に対しても腰が低い。次回の予定を決める時の会話。
裁「では次回は6月20日ということでよろしゅうございますかぁ?」
弁「はい、大丈夫です」
裁「恐れ入りますぅ」
珍しい。
すっかりこの裁判官が好きになってしまいました。

弁護士はある作家にすごく似てる。
こういう顔の作家がいたよなぁ、とずっと考えていたんだけど、結局名前が出て来ない。無念。
この弁護士は上手いです。
これぞ私がイメージしていた弁護士です。
被告人は覚せい剤の前科4犯。被告人質問でいきなりここを先制攻撃です。
「あなたの前科を見るとね、誰だって、『またやるな、これは』と思っちゃいますよ」
「検事さんも後でこのことを多分言うと思うけどね。今まで裁判で何回も、もうやらないって言ってるんですよね。それなのにまたかってね、皆思うわけですよ」
ここで検察官、苦笑いしながらウンウンと頷く。
弁護人は質問というより、もはや説教モードです。
今回の反省は今までとは違うんだ、という主張をするべく、質問の形をとった弁護人の説教は続きます。
「あなた、41でしょう。もうこれ位の歳になるとね、あともう一花咲かせられるかどうかってところですよね。その貴重な時期にね、刑務所に入ってね、出てきたらもうあと働けるのは10年ちょっとですよ」
ここで弁護人、声を大にして訴えます。
「これが立ち直る最後のチャンスなんですよ!!」
そうきたか。
冷静に理屈だけ考えると、同じように30歳の人にも50歳の人にも最後のチャンスなんだと言う事ができるような気がするけれど、弁護人のメリハリある話し方のためにすごく説得力があるように聞こえる。
弁護士ってのはやっぱり口八丁手八丁だなぁ、と改めて思ったのでした。
最後の意見を述べるところでも、
「私の質問に答えるときの被告人の表情を見て頂きたい。真剣な眼差しに、彼が本当に立ち直ろうとしている気持ちが表れています」
とかなんとか。芝居がかっていて、弁護士度満点。
また一緒に働きたいという情状証人の言葉や高齢の母のことを持ち出して、被告人の反省を促します。
ついには被告人の頬を涙が流れる。
これだよ、私がイメージしていた法廷は。

裁判官も検察官も弁護士もそれぞれ個性的で楽しい法廷でした。
ごちそうさまです。


コメント(0)  トラックバック(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました