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ネクロポリス [本]

なんだか急に合宿というものをやりたくなった。
もっと具体的に言うと、帰る時間を気にせず、ダラダラと思いつくままに議論する、ということをしたくなった。

憧れは恩田陸の世界。
恩田陸の小説の中で、登場人物たちはやたらと議論好きだ。
閉ざされた世界の中で、日常から切り離されて、彼らは議論に耽る。
お茶を飲みながら、コーヒーを飲みながら、酒を飲みながら、タバコを吸いながら、じっくりと議論する。
メンバーは基本的に高等教育を受けたインテリばかり。
ちょっとわざとらしくて鼻に付く時もあるけど、贅沢な時間の過ごし方だなぁ、と憧れる。

で、久しぶりに読みたくなって、この本を引っ張り出した。

「ネクロポリス」 恩田陸





上下巻。再読。
読書ノートの記録によると、初めて読んだのは2009年3月。
例によって、まったくストーリーを覚えていない
すごく新鮮。

恩田陸は文章やキャラクターにちょっとクセがあって、好き嫌いが分かれるところだと思う。
でも、舞台設定が抜群にいい。
ちょっと不思議な、閉ざされた空間を作るのがものすごくうまい。
民俗学的要素が織り込んであったりして、オタクのケのある人にはたまらない。

この国では「ヒガン」の期間になると、アナザー・ヒルという聖地へ行き、一か月を過ごすという風習がある。
ここでは死者が実体を持って「お客さん」として現れるのだ。

アナザー・ヒルは運河に囲まれた陸の孤島。外部につながる水門は3日に1度しか開かない。
別に閉じ込められているわけではないが、基本的に外部とは遮断されている。

昼間はできるだけ一人でいて、本を読んだり瞑想したりして静かに過ごす。
夜になると、今度はパブに繰り出して賑やかに楽しむ。
運が良ければ不意に「お客さん」に会えることがある。
日常から離れて、死んだあの人と会うためだけに過ごす、特別な一ヶ月。
なんと贅沢な過ごし方でしょう!

しかも今回のヒガンは最初から異常事態が続く。
入り口の大鳥居に死体が吊り下げられていたり、人が突然消えてしまったり。

そこで主人公たちは夜になると食堂へ集まって、あーでもないこーでもないと議論する。
食事をしながら、酒を飲みながら、コーヒーを飲みながら、何時間もおしゃべりする。
帰る時間も、明日の仕事も、今は考えなくていい。
気の済むまでおしゃべりしたら、自分の部屋へ戻って寝る。
朝も、起きたくなったら起きる。
なんと、なんと贅沢な過ごし方でしょう!

あー、私もアナザー・ヒルでヒガンしてみたい。



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