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Tさんのお墓参り [日記]

トーハクで聖林寺十一面観音を拝見した後、次の予定までに少し時間があった。

行きの電車の中で、「そういえばTさんのお墓はこのあたりだったはず……」と思い出していた。
なにも用意していないけれど、近くだったら行ってみようか。
そう思って調べたら、歩いて20分もかからないような場所だった。
すこしタイトなスケジュールにはなるけれど、今日行かないとしばらく行けないような気がして、思い切っていくことにした。

Tさんは私が新卒で入った会社の先輩だった。
社員ではなく協力会社の人だったけど、社員以上に色々面倒をみてもらった。
私にプログラミングのいろはを教えてくれたのがこの人だった。
今思えば、自分も仕事を抱えているのに、別会社のなーんにもわからないパッパラパーな新卒の小娘によくあんなに丁寧に指導してくれたものだ。

仕事以外にも色々とよくしてくれて、宝塚に連れて行ってもらったり、ハマりたてだった歌舞伎のことを教えてもらったりした。
私がその会社を2年ちょっとで退職した後も、もう一人の先輩と3人で何度も食事に行った。
スペイン料理、焼き鳥、アフタヌーンティー。
銀座を中心に、美味しいものを色々食べた。
年に1,2回ほどだったけど、音頭を取って声を掛けてくれるのはいつもTさんで、その面倒見の良さのおかげでずっとご縁が続いていたのだと思う。

最後に会ったのは2019年8月のしゃぶしゃぶだった。
写真が残っている。
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めちゃんこ肉食ったのをよく覚えている。

その後コロナの騒ぎが始まり、なかなか会う機会のないまま、たまに3人でメールのやり取りをしていた。
Tさんは変わらず元気そうだった。

2020年9月に、私から先輩二人にいかがおすごしですか、という内容のメールを送った。
Tさんからは返事がなかった。
そんなことは今まで一度もなかったのに。
なんとなく嫌な予感がした。

10月、もう一人の先輩からのメールでTさんが8月に亡くなっていたことを知った。
熱中症だったらしい。
悲しいというより、悔しかった。

谷中はお寺の多いところだということを初めて知った。
至るところに小さなお寺がひしめいている。
途中のお花屋さんでお墓参り用のお花をください、と言ったら、私が普段仏壇やお墓で見るのとはまるで違う華やかな花束が出て来た。
ちょっとお高めだったけど、とてもいいなと思った。

お寺へ着くとちょうど扉が開いて作務衣を着た若いお坊さんが顔を出したので、お墓の場所を教えてください、とお願いした。
名前を言うと、昨年の夏に亡くなった方ですよね、とすぐにわかった。
よくお友達がお参りにいらっしゃいます。お友達の多い方だったんですね。
と言っていた。

お線香もここで買うことができた。
ガスコンロで火を着けてもらっている間、この状況なので近親の方だけの葬儀でした、といったことを伺う。
お坊さんは火のついた線香と水の入った桶を持ってお墓の場所まで案内してくれた。
梅の木かな。少し木陰になるいい場所だった。
東京はお墓も小さくて密接しているんだな、と思った。

お坊さんは花入れの水を取り替えてくれて、ごゆっくりお参りください、と言って去って行った。
私は花入れに持ってきたお花を挿した。
とても綺麗でいいな、と思った。
でも、死んでお花を供えてもらったって、本人は嬉しくもなんともないよな、とも思った。

Tさんは演劇が好きな人だったけど、漫画やアニメも好きだった。
私いま進撃にハマってるんだよ。その話したかったな。

お墓はとても静かで気持ちのいい場所だった。
朝は土砂降りだったけど、その時は少し陽が射していた。
上野に来たときはまたお参りしよう。
そう思いながら私はお墓を後にした。


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