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塩狩峠 [本]

「塩狩峠」 三浦綾子

キリスト教徒ではなく、キリスト教の知識もさほど持っていない人間が、果たしてこの話に感動するだろうか、という疑問がまず浮かびました。
この本が出版された当時を私は知らないけれど、なんとなく仏教、という人が多い日本において、この話に心揺り動かされた人がそんなにたくさんいたとは思えない。
「アルジャーノンに花束を」でまったく感動できなかった無感動な私だからそう思うだけかしら??

この本が良いとか悪いとか面白いとかつまらないとかの話ではないんです。
この本ね、私が読むと、小説の形をとったキリスト教伝道書に見えるんですよ。
そもそも三浦さんはキリスト教徒だし、連載された雑誌もキリスト教の雑誌だから、キリスト教徒の信仰の情熱を描いた小説であるのは当たり前のこと。
で、これをキリスト教に関してほとんど興味も知識もない人間が読んで、どこまで共感できるのかなぁと思ったわけですよ。

主人公の少年期から北海道へ行くまでの、生とは何か?死とは何か?罪とは何か?いかに生きるべきか?といった若者らしい悩みや思索は私も寄り添って一緒に考えることができたし、こういうことを考えるタイプの人間と考えないタイプの人間がいて、考えるタイプの人間って幸せになれないんだよねー、とか我が事のように思ったりしたわけです。
ところが、主人公がキリスト教に目覚め、神の愛を信じて信仰生活に入っていくに従って、だんだんと遠くから眺めるような気持ちになってしまったのですよ。
で、これって平均的な日本人は大抵そうなっちゃうんじゃないかと思ったわけです。
実質無宗教な大部分の日本人には、この激しい罪の意識とか自己犠牲の精神とかはなかなか理解しづらいのではないでしょうか。
みんな本当にこの小説の精神を理解して共感して感動したのかなぁ。
信仰心はないけれどこの話にはいたく感動した、という人の話を是非聞いてみたいと思いました。

ところでこの小説、主人公の最期が小説の結末で、おそらくこの本を読もうと思う人はそれを知った上で読む人がほぼ100%なのだと思うのだけれど(裏表紙の紹介文にもいきなり書いてあるし)、その結末を知った上で読むのと、知らないで読むのとでは読み方が変わってくるのではないかと思う。
こういうロングセラーの文学作品においては筋が知れ渡っていることが多くて、だからこそ、運良くまっさらな状態で読める人は幸せなんじゃないかと思うのでした。
だってすべての小説はミステリーでしょ。





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けめこ

遠藤周作の「沈黙」はまた違っておりますよ。
高校の授業でやっただけだけど。

ライラもそうなんだよね。
途中からすーっとひいちゃった。
「原罪」っていうのが、日本人には
いまいちぴんとこないのだと思われます。
ちなみに塩狩峠のあらすじをいまここで知りました。
まっさらな状態の人がここにいたのですが、
たぶん私はもう読まない。です。
by けめこ (2011-10-19 16:13) 

若隠居

うん、私も読み終わって真っ先に、「沈黙」と読み比べてみようと思ったよ。
なにかであらすじを読んで、こりゃ読まねばなるめぇとは思っていたんだよね。

ところでけめこもKMKというブランドを立ち上げてはどうだろうか?
私の場合YKKでファスナーになっちゃうんだけどさ。
by 若隠居 (2011-10-20 13:04) 

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