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冷血 [本]

「冷血」 トルーマン・カポーティ



「ティファニーで朝食を」が有名なカポーティですが、こういうのも書いています。
1957年にカンザス州の穏やかな農村で起きた一家四人惨殺事件を追ったノンフィクション・ノベル。
作者は執筆に先立ち、3年かけて6000ページに及ぶ資料を収集し、さらに3年近くかけて整理したという。
綿密な取材と小説的繊細な文章表現によって、被害者一家、犯人、捜査官、町の人々などを、まるですべてを見ていた神のような視点で描き出す。

犯人2人組は初期に登場するが、彼らが何を目的としてどのように犯行に及んだのかは終盤にならないとわからない。
2人の逃避行はロードノベルのようでもあり、その間にそれぞれの生い立ちが語られ、また事件周辺の様々な人々の生活や言葉が綴られていく。
最終的に読者は「罪とはなにか」「罪を犯すとはどういうことなのか」「人が人を裁くということ」「刑罰と更生の可能性」といったことに思いをいたすところまで連れてこられる。

この類のものを読むといつも思うのが、運というものの暴力的なまでの影響力だ。
殺人者がそのような心身を持ってそのような環境で生まれ育ったことから、ささいな巡り合わせによって起きた事件そのもの、そしてたまたま居合わせただけで殺される被害者まで、一言でいえばすべて運。
意志も努力も一瞬で吹き飛ばす運の圧倒的な力に畏敬の念を抱く。
そして何とも言えない無常観が残るのです。



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