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実家に一時避難中 [一人暮らし]

実家からもらってきたパネルヒーターでだいぶ過ごしやすくなったけど、それでも朝の室温は12度しかない。
職場に着いたら、エアコンが入っていない状態の室温が13度で、こっちの方があったかい。
もういっそ職場に寝泊まりしたい。

木曜日朝の時点では雪がチラつくかな、程度にしか考えていなかったけど、職場で天気予報を見ていたら積雪とかなんとか言ってる。
翌朝は間違いなく道路は凍結しているだろう。
私の車はノーマルタイヤだし雪道に慣れていないので、凍結道路で出勤する気はさらさらない。
休みを取ることもできるし、在宅勤務も可能だけれど、凍えるボロアパートに一日中こもっているのは絶対に嫌だ。

数日は最低気温が低い状態が続くとのことで、たまりかねて実家へ一時避難することにした。
初めは仕事が終わってから荷物を持って夜に行くつもりだったのだけれど、お昼過ぎに雪が降り出したので、じゃあ少し早退して……と考えていたらみるみるうちに白くなっていく。
こりゃヤバいね、もう帰った方がいいね、と同じくノーマルタイヤのボスは私より早く帰って行った。
ということで私も早々に退散。

アパートに寄って当面必要な荷物を積んで家の中の始末をつけている間にもどんどん雪は積もっていく。
用心しながら車を運転して、実家に着いたときには心底ホッとした。

築30年の木造アパートに住んでみて、自分が当たり前のように享受していたものが全然当たり前じゃなかったということを知り、その有難さを噛みしめるようになった。

結露せず、カビもなく、断熱シートなど使わなくても寒さを防いでくれるペアガラス。
断熱材の使われている床や壁。
エアコンを使えばちゃんと暖かくなる室内。
石油ファンヒーターの頼もしい火力。

部屋が寒いというのは人を惨めな気持ちにさせる。
生活のためにしなければいけないことをなんとかこなすのが精一杯。
それ以上の、楽しむための何かをする意欲がわかず、少しでも暖かくしようと工夫するとただ茫然と座り込むだけになってしまう。

室温の低い家で暮していると脳が老化するらしい。
寒さで血流が悪くなる上に、こたつや布団でじっとしていることが増え、意欲がわかず、集中力も低下し、アルツハイマーのリスクが高まるとか。
実感としてものすごくわかる。

一方で、寒さに身を晒すことで様々な健康効果が得られるという研究結果もある。
老化の抑止効果もあるのだとか。
特に寒い環境で運動すると効果的らしい。
それはそれで事実なのだろう。
しかし私の経験上、それは帰ってきてホッとできる場所があってはじめてできることだ。
意欲と活力を奪う寒い家に住んでいると、外で運動するどころか立ち上がる気力すらなくなる。

ほんの30年前はだいたいみんなこんなもんだったろうし、さらに時代を遡ればもっともっと寒かった。
今でも私より寒い思いをしている人はたくさんいるはずだ。
でもやっぱり寒いものは寒い。
電気に頼り切る生活はいざという時に脆いということもわかっている。
でもやっぱり寒いものは寒い。
文明の発展は人の能力の退化とセットだとつくづく思う。

色んな情報の影響を受けて、私も寒さに適応して環境に依存しないタフさを身につけたいと思ったけれど、もはやその気力がなくなってしまった。
実家でぬくぬく過ごしていると、もうあのボロアパートには帰りたくなくなってしまう。
実家を出たことは後悔していないけれど、部屋選びは失敗だった。
このまま実家に戻ることは今のところ考えていないけれど、暖かくなるまでは二重生活を送ることになりそう。

実家に3,4日滞在するための荷物を準備していて、毎日使っていて本当に必要な物って思った以上に少ないことに気づく。
物を少なくして、生活をシンプルかつコンパクトにした方が楽だし快適だ。
無駄な出費も減るし、人生が軽やかになる。

現に今、二間あるうちの一間は完全に切り捨てて、6畳一間だけで生活している。
その方が暖かく過ごしやすいし、物があちこちに分散していないので楽だ。
私には二間必要だと思い込んでいたけれど、そんなことなかったのかも。

コンパクトな暮らしに目覚める一方で、今回突然実家に避難しても寒くない部屋と寒くない布団で寝られたというのは、余分なものを持つ生活の豊かさを享受したとも言える。
もしもの時のための備えと、ただの無駄、その線引きは難しい。
やはり何事にもいい面と悪い面があり、何かが絶対的に正しいということはないのだろう。

私の場合に限って言えば単身だし、いざとなったら実家に甘えるというセーフティネットもあるので、出来るだけ無駄を削ぎ落とす方向でいいんじゃないかと思っている。

今はまだあのアパートで頭を使うことができる気がしないけれど、もっとスッキリと物を減らして、いい物件が見つかればすぐにでも引っ越したいと思うようになってきた。
引っ越しを短期間で繰り返すのは出費がかさむけれど、このままではお金よりももっと大事なものが壊れていきそうで、そっちの方が怖い。

実家を出る前は、ものすごく色んなものに恵まれているということに目が向かず、自分の生活や人生が不満だらけに思えて、あれがないこれがない、私は持たざる者だ、と嘆いていた。
でもそういう不足感って、衣食住という基本が満たされているからこそ出てくるものなのだと身をもって知った。
寒い室内で固まっていると、承認欲とか自己実現とか、ホントどうでもよくなってくる。
それはそれでいいことなのかもしれないけれど。

寒くも汚くもない実家の風呂に浸かっていると、両親がとりあえず健康で自立した生活を送ってくれていること、いざとなったら逃げ帰る実家があることが、手を合わせたくなるくらい有難いことだと思えてくる。
2人がいつまでこうして元気に暮らせるかわからないけれど、できるだけ長く健康でいて欲しい。
それは親の幸せを願うというよりは私の欲得にすぎないのだけれど、今までは「早く死んでくれないかな」くらいに思うこともあったので、だいぶ親に対する気持ちが変わったと思う。

今回の引っ越しは失敗と言えば失敗かもしれない。でも実家を出てみて本当に良かったと思う。
ぬくぬくと暮らしつつ「ないないない」と文句を言っていたあの頃より、しもやけの手をさすりながら与えられたものに心から感謝している今の私の方がずっといい。




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