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生まれてきたことが苦しいあなたに [本]

「生まれてきたことが苦しいあなたに」 大谷崇



Amazonの神に勧められたんだったかなぁ。
私が買った時はレビューが数件程度だったんだけど、今見たら119件も入っていた。
どこかに書評でも載ったのかしらね。

本書のサブタイトルは「最強のペシミスト・シオランの思想」となっていて、フランスで活躍したルーマニア人思想家、エミール・シオランの思想を紹介したものです。
いつでも自殺してこの世を去ることができるということが人生の救いになるとか、怠惰はあらゆる行為の拒否であって悪に満ちたこの世においてこれ以上の善行はないとか、なるほど見事なペシミズムである。
この徹底した悲観主義、ポジティブさのかけらもない考え方にホッとして気が楽になるの、不思議よねぇ。

シオランの思想もさることながら、それに惹かれてルーマニアにまで留学してしまった著者もなかなかのペシミストで、その語り口が私のような捻くれ者には大変心地よい。
例えば、あとがきに書いてあるシオランと出会った頃の著者の回想。

「音楽を聴いても、ポジティブな歌詞が出てきたとたん、うるせえ死ねと思ってただちに消していた」

私はここを読んで「あなたのそういうところ好きよ」と笑ってしまったのだけれど、反対にめんどくさいやつ、と思う人もいるかもしれない。
そういう人には本書の面白さ、シオランの思想の面白さは全然理解できないだろうと思う。

「人生はむなしい」という言葉に、絶望や反発ではなく、ほのかな安らぎを感じる方はきっと面白く読めると思います。
少なくとも私はとても面白く読みました。

ところで、私にとってルーマニアというのはあまり馴染みのないよく知らない国で、私がかつて読んだ本で覚えているのは「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」と「ルーマニア・マンホール生活者たちの記録」くらい。
あとはドラキュラもルーマニアらしい。
そこにシオランが加わると、なかなかどうしてクセの強い顔ぶれだ。
西欧列強とロシアに挟まれて歴史に翻弄されてきた東欧の国々には、島国日本人にはわからないことがたくさんあるのだろうなぁ、と思います。



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