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スマホ脳 [本]

「スマホ脳」 アンデシュ・ハンセン



スウェーデンの精神科医が書いた世界的ベストセラー。(らしい)
新書のベストセラーはクソが多いけど、これはとても読みやすかったし興味深い内容でした。

人間の脳の働きは狩猟採集生活を送っていた頃のままなので、まだデジタル社会には適応できていない、という話。

最初に掲載されている「まえがき」と「コロナに寄せて――新しいまえがき」だけでも読む価値がある。そしてこれを読むと最後まで全部読みたくなる。

興味深い話題がたくさん盛り込まれていてすべて紹介しているとキリがない。
本書の中で度々話題に出て、かつ私自身、身につまされたのは、やはりSNSが精神に与える影響について。
一部引用します。

「SNSを通じて常に周りと比較することが、自信を無くさせているのではないか。まさにそうなのだ。フェイスブックやツイッターのユーザーの3分の2が「自分なんかダメだ」と感じている。」

「SNSは私たちの精神状態に影響を及ぼす。常に他人と比較することがストレスになり、心に不調をきたすのだ。」

「フェイスブックを使った人ほど、人生に満足できていなかった。珍しいバカンスや高級グルメの写真に集中砲撃されると、短時間でも人生の満足度が下がる可能性があるのだ。」

「ある期間にSNSに費やした時間が長かった人ほど、その後の数か月間、人生に対する満足度が下がっていた。」

この本を読んだのは1月で、どう考えてもSNSはやめたほうがいいと思ったけれど、実際にやめるまでに半年近くかかってしまった。
しかもこの悪影響は数か月後まで影響するって、ホント恐ろしい。。。

でもさ、何年もSNSを使っていて、別にストレスを感じることなく楽しんでいる(ように見える)人もいるよね?
それについてはこういう記述がある。

「それ(SNS)以外の場所で他の人からしっかり支えられている人は、SNSを社交生活をさらに引き立てる手段、友人や知人と連絡を保つための手段として利用している。そうした人たちの多くは、良い影響を受ける。対して、社交生活の代わりにSNSを利用する人たちは、精神状態を悪くする。」

他の本にも書いてあったんだけど、SNSを楽しく利用する前提条件として「自分がある程度リア充であること」が必要らしい。
経済的豊かさだけでなく、交友関係の豊かさにおいても「持てる者はますます与えられる」というマタイの法則があてはまるとは、なんとも残酷な話。
そして、なかなか人と会えない今の状況でSNSを社交生活の代替手段とすることの危険性を感じる。

さらには、

「SNSを頻繁に利用することで精神状態が悪化するリスクのある人もいる。神経質で、心配性で、常に不安を抱えている人たちだ。それほどではない人よりも、強く影響を受ける。」

「自己評価が低く自信がない人は、SNSのせいで精神状態が悪くなるリスクを抱えている。自分を他人と比較しがちだからだ。」

とあり、まさに私のような人間がSNSで承認欲求を満たそうとするとかえって精神状態が悪化するので絶対やっちゃいけない。

作者はSNSの利用時間を制限することを提案している。

「三週間後、(SNSの)利用を30分に減らしたグループは精神状態が改善していた。調査開始時にうつ症状のあった人たちは、以前ほど気分の落ち込みや孤独を感じなくなっていた。」

「(SNSの利用時間の制限によるよい影響は)フェイスブックで嫉妬を感じていた人たちへの影響がとりわけ顕著だった。」

私もTwitterの利用時間を制限しようと試みたけど、一日30分まで、というのは無理だった。1時間の制限すら超えてしまうことがほとんど。
もうアカウント消す以外に方法はないと感じた。
アプリを消すとかもあんまり意味がない。
Twitter上の付き合いがある限り、制限はほぼ不可能だった。

心の健康を保つために、作者は以下の3つを提唱している。

1.運動(心拍数が上がり、汗をかくくらいの運動が効果的だが、速足で歩くだけでも驚くほどの効果がある)
2.十分な睡眠(適切な長さは人によって異なるが、一般的には7時間以上)
3.スクリーンタイムの制限

スマホを見てドーパミン中毒になっていないで、自分の心身の健康を守りたいですね。



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読書記録の1000冊目 [本]

読書ノートの記録が1000冊になりました。
念のために言っておくけど、ノートが1000冊になったんじゃないからね。

2004年7月に始めたから、17年弱。
年平均58.8冊というペースは、一年で何百何千(もしかしたら何万)冊と読む人がいることを考えたら微々たるものだけれど、塵も積もれば山となる、でやはり嬉しいものです。
この読書ノートは途中から印象的だった箇所を書き写すようにしたので、これまで読んだ本の100%私用にカスタマイズされたエッセンス版となっていて、私の一番の宝物です。

1000冊目の本はこちら。

百年文庫14「本」


島木健作『煙』
インテリ崩れの青年のモヤモヤ。

ユザンヌ『シジスモンの遺産』
希少本を巡る実に馬鹿馬鹿しくも愉快な話。当人にとっては命よりも重要だけど傍から見ると滑稽でしかない。

佐藤春夫『帰去来』
最初の一文が5ページも続く。突然訪ねてきた珍客とはいえ中座してご飯食べてくるってのがちょっと面白い。この時代には別に珍しくもなかったのかな。


昨年は16冊という我ながら愕然とする数字で、インターネットとスマホに脳が侵されていることをひしひしと感じて恐怖します[がく~(落胆した顔)]
今年はせめて…せめて50冊は読みたい……。
スマホとSNSマジ怖い。。。


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ルーマニア・マンホール生活者たちの記録 [本]

「ルーマニア・マンホール生活者たちの記録」 早坂隆


久々に色々と考え、書きたくなった本です。

ルーマニアと言われても、日本人の私には東欧の国、という知識しかなく、ドラキュラの国と言われれば、ああそうなんだ、という程度のお粗末な認識。
そのルーマニアは、今でこそある程度の経済成長を遂げてはいるけれど、かつては「ヨーロッパのエチオピア」と言われるほどに貧しかった。
共産主義の皮を被ったチャウシェスク独裁政権が革命によって崩壊した後、ますます混迷する経済の中で、劣悪な環境の孤児院から逃げ出した孤児たちの一部は、マンホールの中で生活するようになった。
そんな孤児たちの生活を追ったのが本書です。

とても読みやすく、興味深い内容でした。
まず書き方がとても私好み。
私は作者の具体的な顔が前面に出てくるドキュメンタリーが好きではない。
本書は作者である「僕」の視点で描かれますが、その「僕」の個人的情報はほとんどなく、感情の描写も最小限に抑えられているので、RPGの主人公のような存在になっていて、まったくうるさくない。
なぜ日本人なのにルーマニア語を自由に使えるのかというバックグラウンドすら最後まで出てこない。
あえてそういう書き方をしているように思う。
余談ながら、同時期に読んだ別のドキュメンタリーは新聞の書評などでも紹介されて評判だったけれど、作者の安っぽい心情がうるさくで私はあまり良いとは思わなかった。
ま、好みの問題でしょうけど。

季節を巡るような構成も良く、ルーマニアの歴史や文化に関する情報もわかりやすい。
自分の知る外国は本当に世界のほんの一部だということを思い知る。
ていうか、入ってくるのがほとんどアメリカに関連する情報ばかりだというのは、日本に対する影響力を考えれば仕方ないこととは言えども、ちょっと情報統制っぽい感じがして少々気味悪くもある。

暗く不衛生なマンホールに暮らす孤児たちは、物乞いや万引きなどをして生活している。
その多くは差別を受ける最貧困層のロマ人(ジプシー)で、常に暴力や罵倒を浴びる彼らのほとんどが、唯一の逃げ場所を求めてシンナー中毒となる。
そんな孤児の一人、ダニエルの背中には革命時の流れ弾を受けてできた銃創がある。
ダニエルは言う。
「僕は日本に生まれたかった。なぜこんな国に生まれてしまったんだろう」

この言葉を読んで私はハッと胸を衝かれる。
そうか、私は日本に生まれた時点で幸運なのだ。
そしてそんな安っぽい感慨を抱く自分を恥じる。
自分よりも恵まれない人を見て自分の幸せを再認識するのは相手に対してあまりにも失礼であるし、それは自分よりも恵まれている人を見て自分を不幸だと嘆くことと同じくらい愚かだ。
でもたぶん人間はそういう生き物だ。

本書を読んでいて、そういえば、と思い出す。
米原万里の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」に出てきたアーニャは確かルーマニア人ではなかったか?
しかも労働者階級のために戦うという建前のもと、豪奢な生活をする政権幹部の娘だったような……。
改めて読んだら、まさにそれ。
アーニャのパパはチャウシェスク政権の幹部だった。
あの話はちょっと後味が悪くてモヤモヤが残るんだけれども、ますますやり場のない思いが募る。
同じ国の同じ時期の、最上層の特権階級と最下層の貧困被差別民。
人間のしょうもなさに打ちのめされますが、はて、自分がその特権階級だったら、果たしてその甘い汁を手放せるだろうか。

本書は2001年から2002年にかけての取材をもとに書かれたもので、文庫版あとがきによると、ルーマニアは2007年にEU加入を果たし、経済も好調らしい。
2019年現在、かの国はどうなっているのでしょうか。
そしてかつてマンホールで暮らした孤児たちは、今どうしているのでしょうか。



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冷血 [本]

「冷血」 トルーマン・カポーティ



「ティファニーで朝食を」が有名なカポーティですが、こういうのも書いています。
1957年にカンザス州の穏やかな農村で起きた一家四人惨殺事件を追ったノンフィクション・ノベル。
作者は執筆に先立ち、3年かけて6000ページに及ぶ資料を収集し、さらに3年近くかけて整理したという。
綿密な取材と小説的繊細な文章表現によって、被害者一家、犯人、捜査官、町の人々などを、まるですべてを見ていた神のような視点で描き出す。

犯人2人組は初期に登場するが、彼らが何を目的としてどのように犯行に及んだのかは終盤にならないとわからない。
2人の逃避行はロードノベルのようでもあり、その間にそれぞれの生い立ちが語られ、また事件周辺の様々な人々の生活や言葉が綴られていく。
最終的に読者は「罪とはなにか」「罪を犯すとはどういうことなのか」「人が人を裁くということ」「刑罰と更生の可能性」といったことに思いをいたすところまで連れてこられる。

この類のものを読むといつも思うのが、運というものの暴力的なまでの影響力だ。
殺人者がそのような心身を持ってそのような環境で生まれ育ったことから、ささいな巡り合わせによって起きた事件そのもの、そしてたまたま居合わせただけで殺される被害者まで、一言でいえばすべて運。
意志も努力も一瞬で吹き飛ばす運の圧倒的な力に畏敬の念を抱く。
そして何とも言えない無常観が残るのです。



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高慢と偏見 [本]

「高慢と偏見」 ジェイン・オースティン  (中野 康司訳)



20年ぶりに読み返しました。
前回は新潮だったような気がしますが、もはや手元にないのでちくまを新規購入。
訳文が自然でとても読みやすい。
文学史に燦然と輝く古典ですが、小難しい思想が語られるわけでもなく、ひたすら俗っぽい話が皮肉とユーモアたっぷりに描かれているので、上下巻ですがあっという間に読み終わります。

以下、ネタバレを含みますのでそういうの気になる方はご注意ください。



前回読んだときはユーモアの部分はあまり理解していなくて、ロマンス部分でダーシーさんステキ、うっとり、としか思わなかったけれど、今回読み直して、すっかりベネット父さんのファンになりました。
あの容赦ない皮肉たっぷりのセリフには何度もニヤリとさせられたね。
ベネット夫人の目を覆いたくなるような愚かさと、ベネット氏の諦観と自嘲を含んだセリフの対比がいい。
この夫婦の会話は冒頭から飛ばしてます。

ダーシーさんは終盤の完全にエリザベスに愛を捧げている状態よりも、こんな下品な家族がいる娘なんかとこの高貴な自分が結婚するなんてとんでもないと思いつつも、どうしても気になってしまってジレンマ、という状態の時の方が魅力的なんだな。
リディアの駆け落ち騒動以降のダーシー氏はちょっと都合のいい王子になりすぎててなぁ。

長女のジェインお姉さまはとびきりの美貌で穏やかで世の中の人は全員いい人だと思いたい心の清い天使のような人で、おそらく一般的には一番男にモテる。
しかし私はこういう「そんな風に悪く言ってはいけないわ。何か誤解があるのかもしれないもの」というタイプの人に自分の悩みや苦しみを話そうとは思わないなぁ。

話の大筋としては、若く美しい娘が金持ちのイケメン青年と結婚して幸せになりましたってだけなんだけれど、描写の面白さは別にして、このハーレクインなストーリーは男性が読んでも面白いのだろうか?
漱石先生はじめ著名な男性作家が絶賛しているのは知っているけれど、「しょせんは金と顔かよ」と思わないのかな?

BBC制作のドラマも素晴らしいようなので、そちらも観てみたいと思います。


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2018年読書総括 [本]

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

お正月恒例の読書総括です。
2018年の読書冊数は52冊でした。
数が少ないのはいつものことですが、振り返ってみると去年と比べて割と質のいい本を読んでいて、その点ではよかったかなと思います。
候補14冊の中から絞り込んだベスト5は以下の通り。順不同です。

ライカでグッドバイ』 青木冨貴子
沢田教一の魅力と、彼の写真の迫力とまなざしの優しさと、青木さんのクールな書きっぷりと。

中東から世界が見える イラク戦争から「アラブの春」へ』 酒井啓子
ISIS怖〜い、テロリスト怖〜い、中東怖〜い、という思考停止状態から一歩抜け出すはじめの一冊に最適。

さらば、わが愛 覇王別姫』李碧華(田中昌太郎 訳)
お前がこの映画を好きなのは十分わかったからもういい、と言われそうだが、ようやく原作が読めて嬉しかったんです。

教誨師』 堀川惠子
続けて読んだ死刑関連本いずれも読み応えがあったが、きっかけとなったこの本で代表してもらいましょう。

津波の霊たちーー3・11 死と生の物語』 リチャード・ロイド・パリー (濱野大道 訳)
丁寧な取材から引き出された当事者たちの複雑な心情が、絶妙な構成によって多層的に描き出される。

ハッピーでロマンチックな本が1つもない。
そもそも読んでないのか?
来年も引き続き良質なノンフィクションを中心に読んでいきたい。


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一日一冊ツイート始めます [本]

今年も残りわずかとなりました。
昨日は大掃除して、今日は東京へ買い物に行って腕がもげるほど食い物を買い込みました。
明日は静かに一年を振り返ろうと思います。

恒例の読書年間総括は年明けに。
大晦日に読み終わる本もあるかもしれないから。

ところで、一日一冊ツイートを始めようと思います。
一日に一冊なんて読んでないので、昔読んだ本も、読みかけの本も、これから読みたい本も。
たまに映画とか漫画も。
詳しく書きたいときはブログでたっぷりと。

若隠居@wakainkyodo

どぞよろしく。


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思考のレッスン [本]

「思考のレッスン」 丸谷才一



あまり本を読まなくなりました……と書いたそばからなんですが、久々の読書感想文です。

丸谷才一による、対談形式の思考についての講義。
なるほどなーと思うところもあれば、同意しかねるところもあり、
面白いなーと思うところもあれば、インテリすぎてついていけないところもある。
全体的に、私は丸谷才一がそれほど好みではないのだな、ということがわかった。
米原万里が「打ちのめされるようなすごい小説」と評した『笹まくら』読んだ時も別に打ちのめされなかったしなぁ。
読み手のレベルが低いからか?

丸谷才一もすごいんだろうが、聞き手もただ者ではない。
名前は出てこないけど馴染みの編集者と思われる。
「それは誰々が何々で主張したことですね」
とかスラスラ出てきて完全についていってる。すごい。

丸谷才一は読書に関する話の中で、全集読みを否定している。
「そういう義務的読書は読書の喜びの敵ですから」と。
一方で、現在読んでいる「鈴木邦男の読書術」では全集読みが大前提として推奨されている。
まだ出会っていないものの中にあなたの好きなものがあるかもしれない。それを発見できるのが全集読みだと。
どちらも一理ある。
うむむ。

折衷案として、とりあえず図書館にあるポプラ社の百年文庫を制覇することにした。
制覇することにしてからだいぶ経つけど、それっきりになっている。

最後に小学校一年生のこくごの教科書について書かれている。
ただ言葉を並べてあるだけで伝えたい思いがまったくないと。
そして、谷川俊太郎、安野光雅、大岡信が作ったにほんごの教科書の冒頭を紹介している。

 ないたり ほえたり さえずったり、
 こえをだす いきものは、
 たくさんいるね。
 けれど ことばを
 はなすことの できるのは、
 ひとだけだ。

特になんということもない簡単な詩だけれども、これから教室でにほんごを習う小さな人が教科書を開いて最初に出会う文章をこれにしたいという詩人の想いに心が震えます。
頭の柔らかい子供たちが触れる小学校低学年のにほんごの教科書こそ、詩人が作るべきだと思いました。



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読書会をしたい本 [本]

珈琲ひりゅうずが読書会カフェをやるということで、私も読書会企画を考えてみることにしました。

そもそも、読書会をしたい本、というテーマ自体がたまらなく楽しい。
そこで「読書会をしたい本について語る会」というのもアリなんじゃないかと思う。
それぞれ3冊くらいずつ持ってきて、なぜそれで読書会をしたいのかを語る。
その中で一冊を決めて……とかいうのはよくあるパターンだけど、それだとビブリオバトルみたいになっちゃって私はあんまり好きではない。
ついでに交換会とかも好きじゃない。

読書会というと小説、という一種のセオリーができてしまっているのが不満な私は是非ノンフィクションで読書会をやりたい。
特に「意識とは何か」について議論したら面白いと思うんだけど、課題本でこれというのが思い浮かばないんだなぁ。
「意識は傍観者である」はちょっと古くなってしまったろうか。面白いし文庫でお手軽なんだけど。
「意識はいつ生まれるのか」も良さそうだけど、まだ読んでないからわからない。
「脳はなぜ「心」を作ったのか」は刺激的でいいんだけど、前野先生は最近ちょっと胡散臭くなってきてるからなぁ…。
岩波文庫の「意識と本質」はいずれ読みたいと思っているのだけれどなかなか手が出ない。

ドキュメンタリー作品もやってみたい。
まだ読んでないけど面白そうだなと思っているのが「ルーマニア・マンホール生活者たちの記録 」。
先日、ルーマニアのインディアン(?)と結婚する夢を見てルーマニアに興味を持った。

右翼と左翼についての本も意見交換しながら読んだら面白いんじゃないかと思うんだけど、政治的なテーマはリスクがありますかね。
雨宮処凛の「右翼と左翼はどうちがう?」とか「右翼と左翼(幻冬舎新書)」あたりお手軽で良さそうに思う。どっちも読んでないけど。

今振り返るオウム、というのも面白そうなんだけどリスキーかしら。
みんなで課題本を読むのではなくて、それぞれが関連本を読んできて、この本ではこういうことが書いてあったんだけどどう思うか、みたいな話をすると多角的に見られるのではないかと。
その場合は村上春樹の「アンダーグラウンド」「約束された場所で」あたりが定番でしょうか。
ちなみに、私が読んだことのあるオウム関連本は
「「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔」
「オウムと身体」
「極秘捜査―政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」」
です。

「戦争は人間的な営みである」も面白いと思うんだよなぁ。
戦争反対!絶対平和!という人も、昭和の戦争は正義の戦争だった!という人も、戦争について考えたことがない人も、きっと面白く読めると思うのです。
戦争の、ひいては人間存在の矛盾を深く考えさせられます。
戦争と平和について語る前の必読入門書だと私は思っている。

小説だったらぜひ津村記久子で読書会してみたい。
津村作品に出てくるパッとしない女主人公みたいな人がたくさん集まったらすごく心強いと思うのです。
その場合のドレスコード:メガネとか設定しても楽しいかも。
「ポトスライムの舟」と「コンビニ人間」を読み比べるのも楽しそうだなぁ。

海外SFなんかもどうでしょうか。
長編ではなくて、短編アンソロジーを課題本にして、自分はこれが好きだとか、この話はよくわからないとか、それぞれの好みを語ると楽しそうです。
そこからさらに、来るべきAI時代について語り合うのもアリ。
海外SFに限らず、短編アンソロジーは人によって好みが違うということを実感できて良いんじゃないかと思うんだけど、アンソロジーで読書会してるの見たことないなぁ。

自分が断然好きな小説に関しては、自分とその本とが作り出す密な世界の中で完全に満足してしまうので、他の人の意見を聞きたいとか話し合いたいという欲求があまりなく、むしろ邪魔スンナくらいの勢いなので、好きな本と読書会をしたい本というのは重なる部分もあるけれどまたちょっと違うものです。


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ハイペリオン [本]

「ハイペリオン」 ダン・シモンズ





SF小説のオールタイムベストで上位に入っているし、Kindle版が安かったので読んでみました。

うん、なるほど面白いです。
なんというか、ハリウッド的娯楽SFですね。
謎あり、アクションあり、ロマンスありの群像劇。

連邦に属さない辺境の惑星ハイペリオン。
ここには「時間の墓標」と呼ばれる謎の遺跡がある。
そしてそこに出没するのはあらゆる物理法則を超越する「シュライク」。
この異形の怪物を神と崇める教団によって選ばれた最後の巡礼である7人が、星間戦争の危機が迫る状況下で「時間の墓標」を目指して旅に出る。
旅の途上、7人はそれぞれに抱えるハイペリオンとの因縁とも言える身の上話を順番に語っていく。

私は最初の神父の話が不気味で謎めいていて一番面白かった。
カッサード大佐の話はロマンスというよりエロス。行きつく先がドラマチック。
詩人の話はまあどうでもいいけど、ビリー悲嘆王はなかなか面白いキャラ。
学者と娘の話は人によっては泣けるらしいけど、私はリア充滅べ、としか思わんかった。
女探偵の話はアメリカーン。サブタイトルからしてフィリップ・マーロウなアメリカーン。
領事の話、というか、その祖母の話が一番退屈だったかなぁ。

と、この上下巻では6人の話しか語られません。
残る一人が最大の謎を抱えているはずなのですが、その話は次作で読めるのでしょうか。
この巡礼の旅も、「時間の墓標」へと続く最後の道を進むところで終わっている。
この作品は4部作でそれぞれ上下巻あって、その全部を読む気はないのだけれども、次の「ハイペリオンの没落」でひとまず一区切り付きそうな気がするので続けて読んでみようと思います。

面白いと言えば確かに面白いんだけど、読んでいるといかにも90年代にアメリカで書かれた小説だなぁ、と思う描写が度々出てきます。
基本的に登場人物は白人らしき人々で、優れた容姿とタフさが強調され、アクションシーンが長く、しかも火器を派手にぶっぱなして壊しまくる。
舞台は28世紀の設定なのに、日本人観光客は相変わらず写真(のようなもの)を撮りまくっているとかズッコケるわ。

アメリカ人によるSF小説といっても色んなタイプの作品があるので乱暴に一括りにしてはいけないのはわかるけど、ジョージ・オーウェルの「1984年」はやっぱりイギリス人らしいブラックさを感じるし、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」や筒井康隆の「虚航船団」には日本人らしい虚無感が漂う。
ダン・シモンズにはやはりハリウッドを感じるのです。


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